2026年8月27日午前、全国各地の複数の自治体で、公式ホームページにアクセスできない、あるいはアクセスしづらい状態が相次いで確認されました。

JX通信社のNewsDigestによると、障害は27日午前9時半すぎから確認され、岩手県宮古市、群馬県藤岡市、富山県入善町などがそれぞれSNSなどを通じてホームページの閲覧障害を告知しています。

注目すべきなのは、地理的に大きく離れた複数の自治体で、ほぼ同じ時間帯にホームページ障害が発生していることです。

なぜ、岩手、群馬、富山という離れた地域の自治体ホームページが同時期に閲覧できなくなったのでしょうか。

現時点では、今回の障害について共通する原因や利用しているクラウド事業者、データセンター、CMS事業者などは公表されていません。

そのため、「特定のクラウドサービスが原因だった」「サイバー攻撃だった」と断定することはできません。

一方で、今回の障害を考えるうえで非常に興味深い前例があります。

実は2026年2月にも、全国100件以上の自治体や公的機関などのホームページが一斉に閲覧できなくなる大規模障害が発生しているのです。

今回の記事では、8月27日に起きた障害について確認できている事実を整理したうえで、企業や自治体がクラウドサービス、外部委託、BCPを考える際に確認すべきポイントを解説します。

2026年8月27日、全国各地の自治体HPで閲覧障害

NewsDigestは2026年8月27日10時28分、「全国各地で複数の自治体公式HPが閲覧できない状態に」と報じました。

確認されている自治体の一つが、岩手県宮古市です。

宮古市は公式Xで、8月27日午前9時40分頃から「サーバー障害」のため市ホームページにつながりづらい状態が続いていると発表しました。

群馬県藤岡市でも同様に、市ホームページにアクセスできない事象が発生しているとして、原因確認と復旧対応を進めていることを発表しています。その後、藤岡市は障害が解消し、正常に利用できる状態になったと告知しました。

さらに富山県入善町でも、「サーバーの不具合」により公式ホームページへアクセスできない状態が発生していると案内しています。

自治体公表された内容
岩手県宮古市8月27日午前9時40分頃からサーバー障害によりHPにつながりづらい状態
群馬県藤岡市HPにアクセスできない事象が発生。その後復旧を告知
富山県入善町サーバーの不具合により公式HPへアクセスできない状態

ただし、8月27日時点で「3自治体の障害原因が同一である」とする公式発表は確認されていません。

この点は、今後新たな情報が公表された場合に注視する必要があります。

なぜ離れた自治体で同じ時間帯に障害が起きるのか

今回最も気になるのが、この部分です。

宮古市、藤岡市、入善町は、それぞれ岩手県、群馬県、富山県にあります。

地域内の停電や自治体庁舎内のネットワーク障害などであれば、地理的に離れた複数の自治体でほぼ同じ時間帯に障害が起きることは通常考えにくくなります。

では、何が考えられるのでしょうか。

自治体のホームページは、必ずしも各自治体が庁舎内に独自サーバーを設置し、すべてを自前で運用しているわけではありません。

ホームページ制作会社、CMS事業者、データセンター事業者、クラウドサービス事業者、ネットワーク事業者など、複数の外部サービスを利用して運用されているケースがあります。

その場合、複数の自治体が同じクラウド基盤、同じデータセンター、同じCMS基盤、あるいは共通するインフラを利用していれば、一つの基盤障害が複数の自治体へ同時に波及する可能性があります。

これは今回の原因を示しているわけではありません。

しかし、「異なる自治体で同じ時間帯に障害が発生した」という事象を見る際には、個々の自治体だけを見るのではなく、その背後にある共通サービスや外部委託先まで確認することが重要になります。

以下動画は、システム障害が起きたことにより実際に実害があった事例をまとめたYouTubeです

実は2026年2月にも全国規模の自治体HP障害が発生!その理由

今回の障害を考えるうえで参考になるのが、約6カ月前の2026年2月25日に発生した大規模障害です。

このときは、塩尻市、安曇野市、高崎市、水戸市、鹿嶋市、佐渡市、都城市など、全国各地の自治体をはじめ、100件以上のホームページが一時的に閲覧できなくなりました。

その後、原因として明らかになったのが、サーバー管理を担っていたミライコミュニケーションネットワークのクラウド基盤の不具合でした。

同社の公式発表によると、2026年2月25日12時30分頃から21時54分頃まで、MRSクラウドサービス、MRSクラウドUIサービス、共有レンタルサーバサービスで、サーバーへの接続や閲覧ができない状態が発生しました。

後日の調査では、クラウド基盤を構成するソフトウェアの不具合が原因だったことが判明しています。

外部からの不正侵入やサイバー攻撃、物理的な機器故障によるものではなく、個人情報漏えいも確認されなかったとしています。

奈良県宇陀市も後日、自市のホームページ障害について、ホームページ用サーバーが所在するデータセンターのクラウドサービスで利用していたクラウド基盤の一部ソフトウェアに不具合が発生したことが原因だったと公表しています。

重要:2026年2月の障害と、今回8月27日の障害が同じ事業者・同じクラウド基盤・同じ原因によるものだという情報は現時点ではありません。過去に「共通クラウド基盤の障害が全国の自治体HPへ波及した事例」が存在するという比較事例として紹介しています。

クラウド化すれば「止まらない」とは限らない

クラウドサービスには、設備を自社で保有する必要がなく、拡張性、保守性、バックアップなど多くのメリットがあります。

しかし、「クラウドを利用しているから安心」と考えるのは危険です。

重要なのは、どのクラウドを使っているかだけではありません。

そのクラウド上でシステムがどのように構成され、障害発生時にどこへ切り替わるのか、そしてその切り替えが本当に機能するのかまで確認する必要があります。

例えば、一見複数のシステムを利用しているように見えても、その裏側で同じデータセンター、ネットワーク、認証基盤、DNS、CMS、クラウド環境などに依存していれば、そこがSingle Point of Failure(単一障害点)になる可能性があります。

今回特に重要なのが「災害時の自治体ホームページ」

今回の障害では、もう一つ非常に重要なポイントがあります。

障害が確認された富山県入善町では、8月27日未明から大雨に関する警戒情報が発表されていました。

入善町の防災情報では、午前3時7分にレベル4大雨危険警報・土砂災害危険警報が発表され、その後、自主避難所も開設されています。午後にも引き続き大雨への警戒を呼びかけています。

このホームページ障害自体が大雨によって発生したという根拠はありません。

しかし、住民が災害情報を最も必要とする日に自治体公式ホームページへアクセスできなくなる可能性があるという点は、行政システムのBCPを考えるうえで非常に重要です。

自治体ホームページには、避難所、災害情報、道路状況、行政手続き、医療、給付、学校、公共施設など、住民生活に直接関係する情報が掲載されています。

そのため、単なる企業サイトのアクセス障害とは意味合いが異なります。

「ホームページを復旧する」だけではBCPとして不十分

システム障害への対策というと、「サーバーを二重化する」「バックアップを取る」といった技術的な話になりがちです。

しかし実務では、それだけでは十分ではありません。

企業や自治体が確認すべきなのは、次の7点です。

  1. 自社・自組織のシステムがどの外部サービスに依存しているか
  2. クラウド、CMS、DNS、ネットワークなどに単一障害点がないか
  3. 障害発生時のRTO(目標復旧時間)が明確になっているか
  4. 通常サイトが停止した場合の代替サイトを用意しているか
  5. SNS、LINE、メール、防災無線など別経路で情報発信できるか
  6. ベンダー障害発生時の連絡体制・エスカレーションルールが決まっているか
  7. 復旧手順を作っただけでなく、実際に切り替え訓練を行っているか

特に重要なのが、「情報発信経路そのものを分散する」という考え方です。

公式ホームページが止まったときに、そのホームページ上で「現在障害が発生しています」と告知することはできません。

だからこそ、公式X、LINE、メール、防災アプリなど、本体サイトとは異なる基盤で動く情報発信経路を事前に確保しておくことが必要になります。

ERP / DX SUPPORT

DX推進とセキュリティ対策を
別々に考えていませんか?

クラウド利用、SaaS導入、ERP刷新が進むほど、ID・権限・認証情報の管理は重要になります。システム導入だけでなく、運用設計やガバナンスまで含めたDX推進について、現状の課題整理からご相談いただけます。

無料相談する

これは自治体だけの問題ではない

今回の事例は自治体ホームページですが、民間企業にもそのまま当てはまります。

ERP、ECサイト、受発注システム、物流システム、会計システム、顧客向けポータルなど、多くの企業システムがクラウド化・外部サービス化しています。

その結果、自社でサーバーを管理する負担は減りました。

一方で、企業から見えない場所に依存関係が増えているケースもあります。

「AシステムとBシステムは別ベンダーだから安心」と思っていても、その2社が同じクラウドサービスやデータセンターを利用していれば、共通基盤の障害で同時に停止する可能性があります。

これは、ERP導入やDXプロジェクトでも非常に重要な論点です。

システム構成図だけではなく、「このサービスが止まった場合、業務のどこまで止まるのか」という業務影響まで可視化する必要があります。

ベンダー任せにせず「障害時の責任分界点」を確認する

クラウドやシステムを外部委託する際には、通常運用だけでなく障害発生時の責任分界点も重要です。

例えば、クラウド基盤に障害が発生した場合、誰が原因調査を行うのでしょうか。

CMS会社でしょうか。インフラ事業者でしょうか。クラウド事業者でしょうか。それともシステムインテグレーターでしょうか。

複数のベンダーが関係するプロジェクトほど、「それは当社の担当範囲ではありません」という状態になりやすくなります。

契約時にはSLAだけを見るのではなく、障害検知、一次切り分け、エスカレーション、復旧判断、利用者への告知まで含めた運用体制を確認しておく必要があります。

ERP / DX SUPPORT
基幹システム・クラウド刷新のBCP設計に
不安はありませんか?
システム構成だけではなく、外部サービスへの依存関係、障害時の代替運用、ベンダーとの責任分界、現場業務への影響まで含めて、発注側の立場から整理・支援します。
無料相談する

まとめ 今回の「背景」は今後の原因発表に注目

2026年8月27日に発生した複数自治体のホームページ閲覧障害について、現時点で確認できている情報だけでは、共通原因を断定することはできません。

しかし、岩手県、群馬県、富山県という離れた自治体でほぼ同じ時間帯に障害が確認されたことは注目すべき事象です。

さらに2026年2月には、実際に共通するクラウド基盤の不具合によって全国100件以上の自治体・組織のホームページが影響を受けた前例があります。

「クラウドに移行した」「外部ベンダーに任せた」というだけではBCPは完成しません。

本当に確認すべきなのは、どの基盤に依存しているのか、その基盤が止まったとき業務のどこまで影響するのか、そして通常ルートが使えないときに別の手段で業務や情報発信を継続できるのかという点です。

今回の障害について今後、クラウド、サーバー、CMS、通信設備など具体的な原因が公表されれば、企業のシステム運用やBCPを考えるうえでも非常に参考になる事例になるでしょう。

関連記事

安川電機のERPトラブルはなぜ起きたのか?SAP S/4HANA移行から学ぶ製造業DXの落とし穴

グリコERP失敗はなぜ起きたのか。江崎グリコの基幹システム障害から学ぶSAP S/4HANA導入リスク

なぜERP導入・刷新は「丸投げ」で失敗するのか?

参考情報・出典

NewsDigest「全国各地で複数の自治体公式HPが閲覧できない状態に」

ITmedia NEWS「全国で自治体などのホームページに障害、『閲覧できない』状態に」

ITmedia NEWS「自治体ホームページの障害は解消、原因は『クラウド基盤の不具合』」

ミライコミュニケーションネットワーク「2026年2月25日(水)障害発生/復旧のご報告」

宇陀市「2026年2月25日(水曜日)のホームページ閲覧障害原因」

入善町 防災行政無線・メール配信内容