ERP導入プロジェクトは、システムの機能や価格だけで成否が決まるわけではありません。実際には「どのコンサルタントが、どのような体制でプロジェクトを担当するか」が、導入の質を大きく左右します。契約前にどれだけ丁寧に提案内容を比較検討していても、実際に現場へ入るメンバーの経験やスキルが期待と異なれば、要件定義から稼働後の運用まで、あらゆる工程に影響が及びかねません。

本記事では、こうした「体制のミスマッチ」がなぜ起きるのかを、コンサルティング業界特有の組織構造から紐解いたうえで、発注側がコンサルタントの力量を見極めるための具体的な基準、そして提案書と実際のアサイン体制との乖離を防ぐためのチェック方法まで、順を追って整理します。

DX推進部門や情報システム部門でERP導入・業務改革を検討されているご担当者さまはもちろん、バックオフィス業務の効率化に課題を感じている方にも役立つ内容となっています。

ERP導入コンサルの見極めに関する論点

現場で起きているアサインギャップの実態

SCSK株式会社が実施した「大手企業におけるERP/基幹システム実態調査レポート」によると、基幹システムの運用・保守において、製造業・卸小売業を含む多くの企業が「コストが高い」「すぐに対応してもらえない」「サービスレベルが低い」といった課題を感じています。特に卸・小売業では「対応が遅い」との回答が約4割にのぼり、業種を問わず現場での不満が根強く存在することがうかがえます。

こうした実務面の課題に加えて、「担当者のスキルが期待と異なる」という声も少なくありません。この背景には、提案時に想定していた体制と、実際にプロジェクトへアサインされる若手中心の体制との間に生じるギャップがあると考えられます。

提案書を読んだ段階では経験豊富な人材が対応してくれるように見えても、実際に現場で動くメンバーの顔ぶれは異なる、というケースは決して珍しくありません。

現場で起きているアサインギャップの実態

なぜ若手中心のアサインが起きるのか——コンサル業界の組織構造

このギャップが生まれる背景には、コンサルティングファーム特有の組織構造があります。多くのファームでは、事業責任者であるパートナーを頂点に、シニアマネージャー、マネージャー、シニアコンサルタント、コンサルタント、そして人数の最も多いアソシエイト・アナリスト層という、ピラミッド型の階層構造が組まれています。

実際にプロジェクトへ数多く参画するのは、この母数の多いスタッフ層です。こうした構造自体は業界内では自明のものですが、発注側の企業には十分に共有されていないことが多いのが実情です。

ERP導入体制の実態は、契約前に見えているか?

提案段階と実際の稼働時に生まれがちなギャップ

提案段階で対応してくれたパートナーが、そのままプロジェクトに深く関わり続けると発注側は想定しがちです。しかし実際にアサインされるのは20代〜30代前半の若手コンサルタントであることが多く、提案書にアサイン予定者のプロフィールが明記されないまま契約が進んでしまう場合もあります。

これはコンサル会社側が意図的に情報を隠しているとは限らず、受注時点では他案件の状況が確定しておらず、バイネームでの明言が難しいという事情も関係しています。

若手中心のアサインが引き起こす3つの問題

若手中心の体制は、発注側にとっていくつかの具体的な問題を引き起こす可能性があります。

若手中心のアサインから生まれる問題

提案時との不一致による不信感

提案段階でパートナーの実際の稼働率や、参画メンバーのプロフィールが十分に共有されないまま契約が進んでしまうと、「提案時と話が違う」という不信感につながります。期待していた体制と実際の体制の差は、プロジェクトの初期段階での信頼関係にも影を落としかねません。

実務理解不足によるコミュニケーションの齟齬

ERP導入の経験が浅いコンサルタントが中心となった場合、業務の流れやシステムの実画面に対する土地勘が不足し、会話が噛み合いにくくなる場面が出てきます。本来スムーズに進むはずのやり取りに、余計な手間が生じてしまうのです。

自社側の負荷増大とプロジェクト停滞

コンサル側の土地勘不足を補うため、本来コンサル側に期待していた役割の一部を自社側が担わざるを得なくなり、負荷が積み重なっていきます。

要件定義や課題整理の停滞は、プロジェクト全体の進行にも影響を及ぼしかねません。組織構造に起因する期待値のギャップが、最終的には発注企業の負荷増大という形で表面化する、という一連の流れとして捉えておくとよいでしょう。

発注側がコンサルタントを見極めるための具体的な基準

コンサルタントの力量は、実務経験の年数だけで測れるものではありません。業務の流れやERPパッケージの仕様を実画面レベルで理解している経験豊富な人材は、顧客との会話がスムーズに進みやすいという強みを持つ一方、経験が浅くても、顧客が漠然と感じている課題感や要件を構造化し、誰が見てもわかる形に整理する力に長けたコンサルタントも存在します。

発注側がERP導入コンサルを見極めるための具体的な基準

経験年数と代替評価軸

一つの目安として、ERP導入経験が3年に満たない場合、業務知識やパッケージ理解での強みを期待するのはやや厳しいといえます。

その場合は、課題感や関係者間の意見を取りまとめて整理する力、ヒアリング内容を議事録や資料に構造化して落とし込む実績があるかどうかが、見極めのポイントになります。

実務理解・コミュニケーション・体制の確認ポイント

対象業務の実務フローを実際に見た経験があるか、検討中のERPパッケージの実画面に触れた経験があるかは、実務理解を測るうえで有効な確認事項です。

あわせて、初回の打ち合わせで自社の業務や課題感を的確に汲み取れているか、専門用語をかみ砕いて説明できるかといったコミュニケーション面、さらに経験豊富なメンバーと若手メンバーがどのような役割分担で参画し、経験の浅いメンバーの担当領域に上位者によるレビュー体制があるかという、体制・役割分担の確認も欠かせません。

提案書と実際の体制の乖離を防ぐチェック方法

提案書の内容と、実際にプロジェクトへ参画するメンバーの体制との間には、ズレが生じることがあります。特にチェックすべきは、提案書に実際に参画する方のプロフィールがしっかりと記載されているかどうかです。

契約前の段階で「TBD(未定)」といった記載がある場合、それ自体を問題視するのではなく、受注後にどのような方がアサインされるのかを、粘り強く確認していく姿勢が重要になります。

具体的には、契約前の提案書確認時には、参画メンバーのプロフィールやパートナー・マネージャー層の実際の稼働率が明記されているかを確認します。契約直後のアサイン確定時には、提案書記載の人物がそのままアサインされているか、変更があった場合はその理由と後任者の経験・スキルについて説明を受けているかを確認します。

そしてプロジェクト進行中は、アサインメンバーに変更が生じた際に事前の共有・相談を受ける運用になっているか、定例会等で体制表と実際の参画メンバーに乖離がないかを定期的に確認することが求められます。

ERP導入コンサルの選定を成功に導く4つの視点

まとめ:体制ギャップを防ぎ、ERP導入を成功に導くために

ERP導入コンサルの選定を成功させるには、若手中心の体制が業界構造上避けがたいものであることを前提としたうえで、経験豊富な人材を見極める視点と、契約前後を通じた継続的な体制確認を組み合わせることが鍵となります。

経験年数の確認、経験が浅い場合の代替評価軸の確認、提案書へのプロフィール明記を求めるアサイン体制の可視化、そして契約後も体制変更を追い続ける継続的なフォローという4つの視点を押さえることで、体制ギャップを早期に発見し、是正することが可能になります。

自社だけでこうした見極めを行うことに難しさを感じる場合は、第三者による検証や伴走支援を活用するという選択肢もあります。誰が実際にプロジェクトへ参画するのかを事前に明確化し、発注企業とプロジェクト推進役との橋渡しを担う存在があれば、体制の不透明さに起因するリスクを軽減しながら、ERP導入を円滑に進めやすくなるでしょう。